歩論野亭日常

阿寒湖の辺りで

2012-01-01から1年間の記事一覧

二つの木の話

およそ八百年前に 鎌倉の鶴岡八幡宮の境内に 小さな銀杏が芽を出した その銀杏は成長しながら 人間世界の様々なドラマを目撃する 公暁が源実朝を待ち伏せして殺す現場を見た 里見氏に鶴岡八幡宮が焼き討ちにあい 北条氏によって再建されるのも見た 秀吉が頼…

交じり合う

自転車は素晴らしい道具だ。 景色を感じ、 周りの音や香りを感じ、 自分の身体を感じ、 それらすべてが一体になったような感覚。 毎日夕方にMTBを走らせる。 阿寒湖の出口の近く、滝見橋へと行った。 橋の下の阿寒川源流部へと降りて行き、 川や森やキノコを…

毛のない化け物たちの畑

山菜キノコを採りに奥山に入って行く そこはどこまで行っても人っ子一人いない動植物たちの庭だ 目は山菜キノコを探し 鼻は周りの植物や動物や土や諸々の匂いを嗅ぎ 羆の気配に怯えながら耳と感覚は辺りに注意を払いながら 沢筋を奥へ奥へと登って行く そう…

ユクと歩むキト

北海道の長い冬に春の兆しが訪れた 昼は次第に長くなり 気温がゆっくりと上がり 雪が次第に溶け始める 水へと変化した雪は低い場所へと集まり せせらぎの水量は日に日に増えてゆく 雨が降りだすと変化は急速になる 日々森の景色は姿を変える まだ雪のある清…

ある羆が自ら語った話

いつの頃からか私はここで暮らしていた 小さい頃は 母親と兄弟たちだけで幸せに暮らしていた 神様が持ってくる美味しい食べ物を食べて 私は兄弟たちと一緒に どんどん大きくなっていった しかしある日 いつものように目覚めた私は 母親と兄弟たちとの住処で…

冬の太陽

極寒の季節の太陽は神々しい 夜明け前の寒さに張り詰めたような暗闇を 様々な種類の黄金色の光で駆逐して 圧倒的な荘厳さで 地平線から太陽は姿を現す あの音も時間も止まったような時間では 古代より太陽が崇拝される理由を 人は難なく納得する事ができる …

追悼 今吉エカシ

阿寒湖アイヌコタンの長老 秋辺今吉エカシが 先日先祖達の住む場所へと旅立たれた。 私はコタンの末席の新参者ではあるが 自分なりに 思い出と想いを記してみたい。 1998年の夏に北海道を旅していた私は インドで出会った今の妻のアドレスを頼りに 阿寒湖ア…

こんな夢をみた

私のいる部隊に 新しい子供達が入ってくる 皆まだ幼い 誰が使い物になるかわからないので ちょっとしたテストを行う 三秒以上触れていると爆発するネットを広げ 子供達に近付ける 彼らはどう振舞っていいのかわからずに 奇声をあげて掴みかかった 子供達は …

雲は浮かんでいるわけではなく、 地球の表面に分厚く覆う空気の海の中の、 その時その時に自分が存在できる 一番ちょうどいい層に漂っているのである。

どうして私は糞まみれになって海の底に沈んでしまったのか

いつの頃からか、 私はある山の天辺に住んでいた。 春から秋にかけては、 私はただ立って、 空や森や動物たちや人間たちを眺めて過ごしていたが、 冬になれば私の仕事が始まり、 鉄の糸を縒った太い紐を引っ張ってぐるぐると回し、 人間たちをぶらぶらと乗せ…

ある蒼蝿の死

春に阿寒湖の森の中で生まれ、 たくさんの兄弟がいたが、 すぐに離れ離れにくらすようになった。 それでも内側から聞こえるカムイの声が、 小さな頃からやる事を全部教えてくれたので、 何をするにも不自由はなかった。 森の中はたくさんの食べ物があったが…

漫画版ナウシカについての新発見

漫画版ナウシカの設定で、 腐海の植物が土の毒を結晶化しているというのは知っていたが、 あの改造された菌類は空気清浄機でもあり、 瘴気と呼ばれるものは実は綺麗な空気であるという解釈に目からウロコが落ちた。 なるほどね~。 確かにそういうセリフがち…