歩論野亭日常

阿寒湖の辺りで

話の通じぬ男

いつもの海辺の散歩道で、海にゴミを捨てようとしている男を見つけた私は、声をかけてやんわりと注意した。
するとその男は、

「このゴミを捨てて害があるというエビデンスを示してください」

と真顔でいってきたのだった。この男、頭は大丈夫か?と疑問に思いながらも、

「え、エビデンス……? いやエビデンスだかなんだか知らんが、海にゴミを捨てるのは…」
「濃度的に問題ない、基準値以下のゴミの量だと科学的に考えられますが、どういう根拠で反対するのか、はっきりとした根拠を示してほしい」

私が言い終わらぬうちに、早口でまくし立ててくる。道理や理屈が通じない。もしかして狂人なのだろうか。

「いや、だから、みんなの海に勝手な理屈を立ててゴミを捨てるのは…」
「そんなこといったってどうするんだ!このゴミの量を見ろ!捨てる以外にしょうがないだろう!そんなに言うなら対案を示せ!できるのか?!できないなら、無責任な、余計なことを言うその口を閉じろ!なにが自然保護だ!この左翼め!」

私は逆ギレして喚き散らす、道理の通じないその男を放置して、その場を離れた。離れたところから、今度はその男に注意した漁師のおじさんに喚き散らしている声が聞こえてきたので、私はため息をつきながらその場を離れたのだった。