歩論野亭日常

阿寒湖の辺りで

エゾリスや熊からの警告

今朝もエゾリスが道路を横切るのを見た。昨日も道の真ん中で轢かれたエゾリスの死体を見た。今年はいろんな人から「エゾリスが道路を渡るのをよく見る」と聞いているが、アイヌの先輩にいわせれば「今年は山の木の実が全然ないからだな」となる。

今年の夏はこの北海道でもとても暑く、しかもそれが長く続いた。そのせいかキノコの生えるタイミングも狂い、阿寒湖のヒメマスは全然獲れなくなり、川の水温は11月になってもあまり下がらず、山の木の実の類はほぼ全滅。阿寒湖畔の森はエゾリスの大好物のクルミがとても多いが、当然クルミも全然ならなかった。

毎年の繰り返しの行動では餌が集まらず、ここではないどこかへと餌を探しに出かけ、慣れない環境で、もしかすると栄養も不足し注意力も散漫な状態で道路を渡り、車に轢かれたりもするのだろう。昨日見た礫死体はミズナラの森のすぐ横の道路の上だった。そのエゾリスは、その森に住んでいたのか、それともどこか遠くから、一縷の望みをかけてその森にやっては来たが、不毛の森を見て絶望したのだろうか。

このところニュースでも全国各地で熊の出没が多発しているのをよく見るが、阿寒湖で見るエゾリスたちの困窮と、おそらく突き詰めれば原因の根は同じところにあるように思う。気候変動により毎年繰り返してきた生活が維持できなくなり、考えずに済んできた問題を目の前に突きつけられ、丸裸で生きるか死ぬかの対処を迫られる動物たちのこれが将来の私たちの姿ではないと、どうも私には断言することができない気がしている。