歩論野亭日常

阿寒湖の辺りで

2020年4月13日

朝に妻の作ってくれたアサリのパスタが素晴らしく旨かった。

二人で朝食をとりながら見たNHKの番組は、東京の御岳山神社の神主一家の継承の話で、弓を使って踊る神楽は、とてもアイヌのク・リムセに似ていた。でも「神への奉納の舞」という意味では一緒だし、これだけ相互に文化的な影響があるわけで、似ていても不思議ではないね、と妻と話す。

札幌で昨夜外出禁止令が出て、なんだか諦めもついたような気持ちで、少しゆっくりめに店へと出勤。曇り空で、歩いていても少し肌寒い。アイヌコタンに着くと、近所の先輩たちが二、三人見える。みな作業着姿で、店前に足場を組んだりしている。暇となれば考えることは一緒だ。アイヌコタンにとっての今月は、大工仕事や店内改装の月になるだろう。

開けてすぐにきなせさんが来店。聞けば弟子屈の山菜はまだ早いようだ。今年は早い、遅いなどと山菜採り愛好者たちは毎年いうが、大抵結局は例年通りなものだ。でも今年の状況では、少し早めに行動を始め、新規の場所を開拓をする時間的余裕があるだろう。店や暮らしの先行きが不透明な以上、もちろんアイヌプリに従い持続可能性を守りながらも可能な限り山菜を集めておくのは大事なことだ。その為には少しずつ間引くように採る場所がたくさん必要になる。できれば今年、そんな有望な場所を見つけたい。見当をつけている場所は数カ所ある。

その後エカシと二組のお客さんが来て今日は打ち止め。手が空いたので薪を運び、マウンテンバイクのタイヤを交換する。硬いスパイクタイヤを外すのにだいぶ難儀したが、なんとか外し終えたところで美幌から妻が帰ってきた。

少ししてから二人で店前の看板を直す作業をする。合板を合わせたものでは、厚くペンキを塗ったとしても雨ざらしの環境では数年しか持たないことがわかったので、厚い板を加工する。

二十一時ごろに切り上げ外に出ると、店の電気がついているのは二軒だけ。闇に包まれたコタンを見ながら、これからコタンはどうなってしまうんだろうか、と思う。最善の未来でないことは確かだが、かといって最悪でないだろうことは、リーマンショックや9.11、3.11を経た経験からわかってはいるが、それでも暗い気持ちになることは止められなかった。店を閉めながら妻が「まあ、暇なら暇なりにやることは色々あるからね」といったが、とりあえずコタンのみんなはその考え方にすがって、コロナ禍の日々を過ごしている。