歩論野亭日常

阿寒湖の辺りで

Youは何しに阿寒湖へ?

実は俺にとって、

シンクロニシティ事象収集が密かなライフワークの一つなのであるが、

先日弩級の事例が発生した。

それについて記したいと思う。

ことの始まり、連鎖の入り口は、

厳密にいえば8月29日に札幌の友人に電話した時から、ということになるだろう。

8月30日に、Perfume真駒内アイスアリーナLIVEを見に行く予定だった俺は、

しかし一つの悩みがあった。

31日に北見であるラビラビのLIVEを断念せざるを得なかったからだ。

しかしまあ、これはどうにも仕方がない。

前日の29日に札幌へ行き、

30日土曜、LIVE終了後に即帰ってくる予定だった。

繁忙期の8月の最後の土日の土曜に休むわけである。

日曜まで休むわけにはいかない。

北見ラビラビLIVEへの未練を残しつつも、

阿寒湖出発前に、PerfumeのLIVEに行きたいというのでチケットをとってやった友人に電話した。

チケットをどう渡そうか?と彼女に聞くと、

今夜PROVOで彼女が主催するラビラビのLIVEがあるので、

郷さんは友だちと会ったりと忙しいでしょうから、

明日のLIVE前でいいです、との答え。

え?マジで?

ラビラビ今日LIVEあるの?行く!と俺は即答。

なんたるラッキー。

札幌へ行くその日に、諦めていた今年のラビラビを見れるとは。

前日入りじゃなければ不可能だった。

初めて行った、札幌にその名を轟かす名店PROVOはとてもいい店だった。

友人たちも来ていて乾杯し、

ラビラビはもちろんいつもの事だけど、

期待をはるかに超える素晴らしい音楽体験をくれた。

それだけではなく、

ラビラビの前に川上さんの披露してくれた歌とユーカラは、

それを聴きながら、俺はもしかしたら、これを聴くためにここに来たのかもしれない、と思うほどに素晴らしいものだった。

アイヌ、過去から脈々としたルーツに繋がるもの、ここにあり。

そういった感じだった。

若手で妻や絵美姉以外でそう感じることはそう多くない。

PROVOの時間は素晴らしいものだった。

そして翌30日。

PerfumeのLIVEを体験するのは、

前回の全国ツアー以来2年半ぶりである。

期待をおさえきれず、開場2時間前に真駒内アイスアリーナに到着。

遠征してきた友人たちと談笑しつつ、ドキドキしながら入場を待った。

開演15分前に指定席へ。

B3ブロック、31番。

メインステージからもほど近く、

センターステージ真横のすぐ側という、

信じられないほどいい席だった。

通路に面しているからスペースがとれ、

これなら思う存分踊って楽しめそうだ。

期待が頂点に達しつつも、

幸運すぎてなんだか現実味が無い。

ハラハラしながら10分前。

PerfumeLIVE恒例の、開始が待ちきれない奴らの手拍子が始まり、

それはあっという間に会場全体に伝染する。

地鳴りのような手拍子の中、

気持ちを抑えきれない奴らがメンバーの名前を叫び出す。

俺も声の限りに叫び、

手拍子を打ち続ける。

あと数分。

場内アナウンスが注意事項を伝え終わる。

大歓声、そして暗転。

さあ、夢の時間の始まりだ。

一発目からド太いキックと凶暴なベース。

しかし他の様々な音も決して死んでないどころか、普段とは違う音色を聴かせてくれる。

今回のPAはとても素晴らしい仕事をしていた。

ステージセットも新機軸で、こんなのが見たかった!と俺は心の中で叫ぶ。

会場を飛び交うめまぐるしいレーザーの光の中、

LIVEパフォーマンス中の彼女たちは、いつにも増して現実離れした変性意識オーラを強力で完璧なダンスと心地いい声で強烈に放射する。

最高だ。ただただ、最高だ。

恐るべき破壊力の最初の4曲を終え、

いきなりムードはほっこりしたものとなる。

それが彼女たちの得難い持ち味だ。

かしゆかが好きなテレビ番組の話を始めた。

「Youは何しに日本へ?」というその番組は、

ちょっと前にPerfumeファンの間で話題となっていた。

前のドームツアーを見に来日したアメリカ人のファンを番組が取り上げたからだ。

かしゆかの話もその回の話からだった。

いつもそうだが、熱狂のLIVEパフォーマンスの合間の、3人娘の世間話のようなおしゃべり。

話は延々終わることなく、漫談のようになっていき、観客もPerfumeも大笑い。

そしてまた曲が始まれば、アリーナの中は異界へと変化し、

俺たちはここではない何処かへと問答無用で連れて行かれる。

2時間半の夢幻の桃源郷は終わり、

友人たちへの挨拶も早々に、

阿寒湖組は夜中の2時に帰宅。

次の日は8月最後の日曜日だ。

昨夜の興奮冷めやらぬ俺は、

Perfumeの最新アルバム「LEVEL3」をかけながら仕事をしていた。

昼が終わり、夕方になればまた夕食のお客さんがやってくる。

ふらりと若いカップルが来店。

話してみると、彼氏は少々日本語ができるようだが、アジアのお客さんのようだ。

しばらくして、会計を払いにやってきた2人。

彼氏が突然、あなたはPerfumeのファンですか?と聞いてきた。

もしかして、と昨日のLIVEに行きました?と聞くと行ったという。

おお、俺も行きましたよ、と2人とまず握手。

最高でしたね、どちらからですか?香港からです、などと話をするうちに、

彼氏がチケットホルダーの中のチケットを見せてくれる。

一瞬、目を疑った。

俺の席はB3ブロック、31番。

彼らの席は、B3ブロック、42番。

俺のすぐ真横の席だ。

一万人いた真駒内の観客の、

その中の俺のすぐ横にいた彼らが、

なぜか次の日、ここにいて、俺と会っている。

奇跡的な確率だ。

鳥肌が立った。

しかも、真駒内のLIVE中最初のMCでかしゆかが話した内容は、

「Youは何しに日本へ?」の話題である。

まさに、その話題の内容そのままに、

外国からPerfumeを見るために来日したファンが、なぜか目の前にいるのである。

こんなことって、あるだろうか。

俺は札幌から360km離れた阿寒湖に住んでるんだぜ?

彼らはおそらく、残念なことに、

MCの内容はわからなかっただろう。

そして俺も動転のあまり、

君たちのような人のことを、かしゆかが話していたんだ、ということを、

彼らに伝えることができなかった。

それは今思えば、とても残念だった。

その時できたのは俺の席を伝え、

一緒に驚き、

一緒に写真を撮って握手して再会を約した、それだけだった。

ほんとうに今では心残りである。

ただ、それだけびっくりしていたのだ、俺は。

顛末は以上である。

別にそれがあったからといって、何があるわけでもない。

しかし、一見無関係なようだが、

俺が思うに、友人に電話した時から、

何らかのスイッチが入り、

偶然の連鎖が始まって、

最後にはとんでもない事が起きたのだと俺は思っている。

何の根拠もないが。

しかし人生には時に、そのようなことがどうやら起きるらしい。