歩論野亭日常

阿寒湖の辺りで

ハワイ

今日は天気はいいが店はとても暇な一日で、おかげといえばおかげで昼過ぎから釧路の自転車マスター林さんを交えて阿寒のメンバーで白湯山へMTBツアーができ、それはとても楽しく得るものも多いひと時ではあったけれども、やはりちょっと物足りない。やっぱり仕事が充実しないとね。

準備して開店したのはいいけれど、通りは車も人も疎ら。お客さんのくる気配はさっぱりない。店の気分と雰囲気を変えようと、最初はレディオヘッドのOKコンピューター。ここで友達が一人来店するもあとは続かない。そこからクラッシュのロンドンコーリング。さっぱり来ない。さらにそこからフージーズを経てローリン・ヒルの大傑作「The Miseducation of Lauryn Hill」でなんとかパラパラ。ここで昼の部終局。

山から降りてきても流れは変わらず。同情したキノコマスター新井さんが来店するまでの間、久しぶりにハイラマズが聴きたくなって一番好きなアルバム「ハワイ」を聴く。ビーチボーイズが好きで好きでたまらない男ショーン・オヘイガンのソロプロジェクトであるハイラマズの音は、ビーチボーイズを感じさせるメロディーの美しさと切なさ、一人多重録音で生み出されるコーラスワークによって本家以上の孤独感を感じさせる、俺的にたまらない音楽なのだ。聴いているだけで音から視覚的・空想的なインスピレーションを得られるようなアーティストの作品は自分にとって数少ないが、このアルバムはそのうちの一枚。他にはBjorkやGAMEまでのPerfumeがそうだな。ハワイはいろいろな意味で特別だ。

特別な理由の一つは、このアルバムを聴いていると、いつもこれを一番聴いていた我が青春時代である東京時代を思い出す事。アルバムの持ち主であり住んでいた部屋の主である幼馴染の小沢君は、俺の音楽の嗜好に決定的な影響を与えてくれた大事な存在だが、奇しくも彼は今、ドイツでミスハワイという名前で音楽活動を行っている。俺は当時作家を目指していて、小沢君が音楽を作っている横でワープロでぱかぱかこのアルバムにインスピレーションを受けて書いた短編黒歴史小説、そのタイトルを「ハワイ」なんてのを書いたっけ。懐かしいなぁ。絵に書いたようなサブカル中二病的内容だったっけな…。

人生とはわからないもので、その後俺は北海道で結婚しポロンノに携わるようになる。そしてその数年後に阿寒湖に来てポロンノの仕事を手伝ってくれた小沢君が仕事の合間に作ったアルバムがきっかけでドイツのレーベルからリリースが決定し、今の彼のドイツでの活動につながっている。ハイラマズのハワイを聴くと、若くて何もなかったけど楽しかったあの俺らの東京での日々と、その後のそれぞれの人生の不思議を感じてしまうのだった。