歩論野亭日常

阿寒湖の辺りで

散歩の感想

今日の店は暇だったので、三時を待たずに自転車に乗った。お気に入りのスキー場へと向かう道にまず入る。雪がだいぶ溶けて林床がだいぶ見えてきたが、葉や下草のない明るめの森は、奥までよく見渡すことができる。まるでタイガのように見えるこの時期の森が好きだ。北方の針葉樹林の湿地帯の風景に、デルス・ウザーラ星野道夫やシベリアタイガーやホロケウカムイの姿を夢想する。白く光る太陽に照らされキラキラと光る小川を眺めながら、頭を出し始めたバイケイソウの淡い緑色やチライアパッポのなんともいえない黄色を楽しみながら、道が登りに入るとギアを軽くして、胸や腹や脚の動きを意識しながらリズミカルに呼吸とペダリングを連動させることに意識を置く。運動不足が続いていたから少し苦しいが、それもまた楽しい。坂を登り切れば景色が開け、振り返れば阿寒カルデラの広大な森に包まれた阿寒湖と山々が見える。何度見ても笑っちゃうぐらいに雄大で、私たちみんながここで生かされている包容力を感じずにはいられない風景。一般的な日常とはいえないかもしれないが、その中からすこし出るだけで、この世界が存在する事がいかに奇跡的なことか、多様な自然がいかに素晴らしく美しいものなのか、そしてそれに気づかせてくれたこの人生の巡り合わせがいかに幸運だったのか、そんなことをこの阿寒湖畔では思い返す事ができる。