歩論野亭日常

阿寒湖の辺りで

秘剣・タモ断ち切り

経済不安、環境不安、雇用不安、将来への不安。

メディアが先か、現実が先かは分からないが、

世界も、日本も、北海道にも、

そして阿寒湖にも漠とした不安が漂うように感じる。

しかし、とりあえず私は今日、

手のあいた間にちまちまと続けてきた、

薪の準備がようやく終わったので、

あーやれやれと思いながら、

家でPerfumeの代々木神ライブを見ているのだった。

全くキャピタリズム的ではないし、

危機意識が足りなさすぎかもしれない。

しかしこれが私の現実であり、とりあえずのやるべき仕事ではあった。

Perfumeはまあ、おまけだが。

今回いただいた木はアカダモが多く、生で半分凍っていて、ちょっと時間がかかった。

適切な木の目の方向に逆らい、

半端なコントロールとスピードで斧を振るうのなら、

ぽーんと跳ね返されて終わりである。

打ちおろした力は自分へと反射し、

体力の浪費と手首、腕の第二関節などへのダメージをまねく。

故に斧と体力の大きさにもよるが、

アカダモの様に粘り強い木や、ふしのある部分などには、

まず最も割れそうなラインを見定め、慎重に設置し、

斧を振りかぶり、自分にできうる最上の一撃を、

そのラインに正確に打ちおろし、

最低でもひびを一部でも貫通させることが求められる。

私はコタンの諸先輩方に比べ圧倒的に力に劣るので、

なかなか一撃で割ることが出来ず、

ために自分なりにちょっぴり秘密を、工夫を凝らしている。

斧を振りかぶり、柄の下から三分の一ぐらいの所に支点となる右手を添え、

構えた状態から両膝を落としつつ、下っぱらに力を入れ、

目標を見つつ、同時に両手で振り下ろして、先端部の運動エネルギーを増加させ、

落下の時点では右手をてこにパワーを増しつつ、

左手でコントロールを行う。

うまくいけば真っ二つ。

そうでなければ、ちょっと見えた木の隙間。

これぞ秘剣・タモ断ち切り。

武士道とはこれシグルイなり。

などと脳内武士道を楽しんでいると、近所の新聞屋さんがやってくる。

おーうまいもんだな、まあ割れなかったらいつでも電話して。

しかしもう暗いんだから、いいから終わりにしな。

そして私は斧を置き、柴の雑種犬・ラタと一緒に散歩に行く。

戻ったら一家で晩御飯を食べ、

店に戻り、数時間後にはその日が終わる。

宇宙の中で、これが私の日常。

これが秘剣・タモ断ち切りの物語。