はたして、これが今年最後のネギ採りになるのか。
さすがに時期的にタイムリミットぎりぎりだが、
しかしまだ醤油漬け用と乾燥用、あわせて最低十キロはいかんといかん訳で、
我々エゾヤマゴリラ二頭は、
極太キトピロが群生するという、伝説のNP、すなわちネギのパラダイスを目指し、
巨大熊が跋扈するという未踏の渓谷に、我が身を省みず分け入ったのであった。
まあおそらく、山菜のために我々が犯す危険の事を知ったなら、
熊カムイたちはその愚かさに、きっと笑うことだろう。
連日の霧雨は、山のすべての存在にとっては体に沁み入る慈雨のようだろうが、
おかげでこの数日のうちにも景色は見る間に変化する。
木の葉のカーテンもササやフキの絨毯もない、かつての明るい春の森は、
霧と新緑の緑に覆われ、瑞々しい地衣類がもこもこと輝き、
森の恵みを満喫する動物たちの食痕も生々しい、うっそうとした場所に変わっていた。
これはまさしくDP、動物たちのパラダイス。
見通しは悪すぎ、ぶよは多すぎ、俺らはビビりすぎでやたらと大声を上げすぎである。
しかし、遂にゴリラたちは発見した。
こ、これはまさにNP、ネギの、ネギのパラダイスやー。
おっしゃー、とったれとったれ、と狂喜する二頭。
しかし、ありすぎるとなぜか採る気がなくなってしまうもので、
まじめにせっせと働く一頭をしり目に、
もう一匹は、写真を撮ったり、滝を登ったりして遊んでいるのであった。
おー、がんばって働いとりますなあ。
いやー、きれいだなあ。
お、やっとるやっとる。
ってな訳で、何とか二頭の活躍で、
ノルマの十キロを確保することに成功したのであった。いやー、疲れたなぁ。
ちなみにその帰り、ついでに春シイタケの場所を見に行ってみると、
こ、これはまさに、SP、シイタケのパラダイスや~。(終わり)